i -アイ-
「宍戸李麻、……俺のツラ、って顔の事じゃないよね。歩き方?息の仕方?雰囲気かな。」
ハッとした。
そうだ、赤髪は目が見えてない。
なのに、ツラって……
「全て、だよ。……御庄の長男に似ているとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。……あいつのことはよーく覚えてる。」
憎悪に染まるその声。
耳を塞ぎたくなる。
鳥肌が止まらない。
「あの男はさ、聞こえないんだよ」
気に圧されて、後ろに全員が下がった。
たった1人、i だけが、無反応。
「ほら、今もそうだ。全員が脈拍が上がる。息苦しそうに息を吐く。後ろに後ずさる。息を飲む。全部、全部聞こえるのに」
赤髪の目がぐるぐると回る。
「お前だけ、お前だけ、……どこにいるか分からない。……気持ち悪い」
そう言って、本当に吐いた。
その吐瀉物をも i はただ見下ろす。
「ぁ……っはぁ……声だけ、声だけで全部把握しなきゃいけないんだ……お前やあの男は……気持ち悪い」
きっと、赤髪にとって" 聞こえない "ことが1番の精神的ストレス。
「その目、生まれた時から全盲か。あんたのバックグラウンドは1度調べたことがある。苦労してきたんだろ。……それの果てが、これか?」