i -アイ-
ゆっくり、藍人が赤髪に近づく。
「触るぞ」
そう言って赤髪の涙を指で拭う。
「泣いてくれて、ありがとう」
優しかった。
気が抜けるほど、温かい。
「はっ、ははは」
「残念だよ。あんたが死ぬのは惜しい」
「ひゃはっ」
「じゃあな。次は地獄で会おう」
そう言って藍人が振り返り、俺らの方に歩いてくる。
意味が分からない。
どういうことだ。
「気ぃつけて、帰れよォ」
手をヒラヒラと振る赤髪。
「どういう、ことなんだ」
「帰るよ」
藍人の表情は優れない。
「あんたは、かっこいい」
扉を閉める前にそう藍人が呟いた。
扉を閉めると、赤髪の笑い声が響き渡り、そして
ドンッ
鈍い音が響いた。
「……は?……今の」
「振り向くな」
藍人が低く唸る。
そうしてビルを出る。
「ここから病院遠いよな」
司さんが呟く。
「少し歩こう。ここまで病院から送ってくれたやつが居る」
協力者ってことか。
路地などを歩き、出たのは子供の遊ぶ公園。
そして、近くに路駐したワゴンに
「傷、開いたか」
「うるさい」
黒のフードにサングラス。
藍人の頭をつんつんとつつく。
「みき、……しろ」