i -アイ-
幹城が着いてくることはなく、颯爽と車に乗りこみ去っていくのが見えた。
「あいつは来ないのか」
「来ないよ、仲間じゃないし」
「敵なら、なんで」
「お互いの利のあることだけ動く。強いて言うならそんな感じだよ」
じゃあ、あいつがお前に手を出したのはお互いの利だったからか?
そう問いたかったが、
「あれはあいつが自分で生んだ不利益。ちゃんと謝ったから、許してやって」
小声で俺にそう言った。
「ごめん」
俯いてそう呟いた藍。
「あ、来た!」
そう声が聞こえて前を見ると、
「ああ、君たち無事だったんだね。藍、鍵田先生がお待ちだよ」
槙野祥。
俺らは藍の前に立つ。
「あー、そうだったね。俺は一応悪役だった」
……一応?
「細かいことは後で説明する。俺は喧嘩とかできないし、薬とかも詳しくないし、変なことはしないから安心して。皆でおいで」
そう笑う槙野祥。
藍人も大丈夫だよ、と言って歩いていく。
縫うために他の部屋に行った藍を、近くの椅子に座って待つ。
部屋から藍が出てきて、個室の病室に移動する。
そんなに傷が深くないなら、病室に移動する必要はないと思うんだが。