i -アイ-
ベッドに座る藍人の前にしゃがみこみ、真剣にそう話す。
そして、温かい笑顔で
「これは医者としてじゃなく、私個人としての望みだけれどね。君には幸せになって欲しい」
藍人は、声は出さずにコクンと頷いた。
「ありがとう」
涙を我慢するように震えた声でそう言った藍人に、もう一度笑って頷いた。
「気をつけて帰るんだよ。落ち着くまでここにいて構わないから。」
そう言ってじいちゃん先生は出て行った。
「……ああ、情けないとこ見せちゃったな」
「久遠、君は」
優介が先に声を出す。
「御庄、藍、なんだな」
続けて俺が言えば、
窓の外を見て、
「鍵田先生に口止めするの忘れてたなぁ」
感情が読めない。
けど、藍人以外の異変は気付く。
「おいおい、知らなかったの俺と優介だけか?」
暁と三國は分からないでもない。
けど、
「蓮、お前、知ってたの?」
俺が聞けば、藍人も蓮の方を見る。
「……誕生日聞いた時、泣いてたのは俺の正体を知ったから?」
藍人が少し微笑む。
蓮は藍人を見つめて
「俺も9月12日生まれなんだ」
無表情の蓮の瞳に涙が浮かんでくる。