i -アイ-
「俺、あの日、親父に昔の動画ファイル見とけって言われて、見ながら待ってたんだ」
震えながら、やっと話す蓮。
「動画ファイルの名前は、『蓮、1歳』『蓮、2歳』『蓮、3歳』。俺が物心着く前までの誕生日会。そこには、俺の両親と、御庄榛人さん、まりあさんが映ってて、ケーキには毎回『蓮&藍』って書いてある。榛人さんとまりあさんが愛おしそうに抱いてる小さい女の子が居て。俺が泣いてる時は、その女の子が俺の頭を撫でて慰めてる。」
俺も、優介も三國も暁も、声を出さないのがやっとだった。
蓮が話すのを、藍人は……いや、御庄藍は笑顔で頷いて聞いていた。
誰よりも強く、俺らを守ろうと戦って、それよりも前は1人で戦ってきた i が。
「愛されてた、俺と同じだけの時間を生きるその人は、どれだけの物を失って、俺よりどれだけ険しい道を歩いてきたんだろう」
御庄藍は、蓮に近寄って、蓮を抱きしめて頭を撫でた。
「苦しかったね。言ってくれれば良かったのに」
そう明るく慰める。
「今度、その動画見せてよ」
蓮は藍を抱きしめて、ああ、と返事をした。
藍が蓮から離れてまたベッドに戻る。