i -アイ-
「いい加減にしろ」
御庄藍は、叩かれて向けられた方向から顔をあげない。
「それじゃあ、榛人さんと一緒なんじゃねえのか」
怒鳴り声。
三國のこんな姿は初めて見た。
「やめてよ」
御庄藍が呟く。
そして三國を見上げる。
「あなたにあたしの何が分かるの」
静かだった。
その声はとても、静かで。
三國は、目を見開いて、少しずつ気が抜けたように目線を落とした。
「そうだな、知らねえよ。……お前のことは何にも。お前が辛い時、傍に居てやれなかったもんな。……榊とか、御庄とか、家同士の関係だ?そんなの、そんなの知らねえよ。
でも、そうだな。
お前に声をかけるのにあんなに一歩が重く感じたあの頃の俺は、どうしようもなく弱かったんだよな。
俺は、俺が一番……情けねえ」
三國は壁をドンッと殴って、病室を出て行った。
御庄藍は、スッと俺を見る。
「ほら、一人で行動させない。」
俺には、分からない。
こいつが何を考えているのか。
目の前で何が起こっているのか。
ただ一つ分かるのは、今REIGNを守るのは俺たちだけだと言うこと。
御庄藍がいなくなると言うだけで、なぜ、こんなに。
「早く消えろよ」
苦しい。
苦しさが、限界だった。
弾かれたように三國を追った。