i -アイ-
緑髪の橘三國(たちばなみくに)。
猫目がちなくっきり二重に、口角の挙がった唇。
昔は女の子みたいに可愛い男の子だったけれど、今は胸板も厚いし、背の高いし、声も低いし。
なんか、男の色気も漂ってる気がする。
お前どーする?隠す?知り合いだってこと。
って探り探り挨拶をする。
「いいよ、三國。隠さなくても」
ゆっくりと落ち着いた調子で話せば、キョトンとする三國。
「ん?いいのか?」
「うん。三國に演技されると笑っちゃうから」
「はー?失礼なやつだな」
うん、三國は安心する。
ずっとは一緒にいられないけど、学校で唯一気を抜ける時間になりそう。
「え……三國さん、知り合いですか?」
「まあな」
そう言ってあたしに近づいて、ふわっと抱きしめる。
「久しぶり、藍」
「久しぶり、三國」
三國は、あたしが榛人を亡くして荒れてた頃のことも、まりあちゃんが亡くなってから1人で行動してたのも知ってる。
i だとは思ってないだろうけど、きっと心配してくれていた。
「ごめんね、心配かけて」
三國にだけ聞こえるように言うと、無言で首を振った。
「こいつ、俺の幼馴染みなんだよ。弟みてえなもん。」
あたしと肩を組み、佐伯に言う。