i -アイ-
藍side
「良かったの?」
病室に入ってきたのは、槙野先生だ。
後ろから声をかけられる。
「ええ」
「……三國くん、目敏いね」
『それじゃあ、榛人さんと一緒なんじゃねえのか』
「榛人は何も言わずに死んだ。色んなもの、自分を取り巻く負のものを全部背負って。榛人が死んだならあたし達に矛先が向いてきてもおかしくない。それがなかったのは、全部背負って地獄に持っていったのかな」
『あなたにあたしの何が分かるの』
ああいうしかなかった。
傷付けるしかなかった。
そんな自分の技量のなさ、余裕のなさを恨む。
「三國を傷付けたいわけじゃないのに」
でもそんな甘いこと、言ってられないじゃないか。
「暁くんは、分かっていたんじゃない?」
『藍、三國にちゃんと謝れよ』
暁も困惑はしてた。
それでも、あたしを信じようとしてくれた。
『俺は、信じてる』
そんな暁の気持ちも汲みながら、いつも通り真っ直ぐ。
『利益、不利益、そういう忖度で行動するのは理解できるよ。今の君は不利益だ。君の意向に沿うよ』
ありがとう、優介さん。
今のあたしに、1番優しい言葉だ。