i -アイ-
周りがザワつく。
そこまで、強制する理由がないよ。
あたしは蓮の背中をポンポンと撫でて
「ここにいるのは、1-Aの久遠藍人と佐伯蓮だろ。俺がREIGNに入るまで、お前と俺はなんだった?思い出せ」
腕の力が緩んだ蓮を体から離す。
蓮は捨てられた子犬のように眉を八の字にして
「とも、だち」
そう呟いた。
「ふっ、忘れんなばーか」
コツンと額に拳を当てれば、
「俺は女装なんかしねえ」
さっきのあたしのボケにやっと返した。
「ああ?アリス可愛いだろ。着てみろよ」
「佐伯なら、いける」
「あ?」
滝谷が混ざろうとして蓮に睨まれてどっか行った。
あいつ、なんだかんだ蓮と仲良くしたいんだろうな。
前日は衣装を着てメイクもする。
教室の中は、もはや教室ではなく店。
金とスペックが物を言うな。
あたしは黒髪のストレートロングのウィッグに赤のチャイナにファーの着いた扇子。
「どんな?」
着替え途中の滝谷の所へ行くと、
「……」
無言でガン見される。
「え、変?」
目線の先を辿って、滝谷の頭を扇子で叩く。
「変態」
「…っ、逆効果だ」
何を感じてやがるんだこの男は。
「お前脚綺麗すぎねえか」