i -アイ-



あの一件から、初めて話す。


……まだ謝ることも出来ないし。

ただ、淡々と聞くしか今は出来ない。



「……」



……、無視ですか。



「三國、無視すんなら来んな」


他の人だったらもっとこう、上手く対応出来るんだけど、三國には甘えが出る。

あたしの低い声が、この場の空気の温度を下げる。



「喧嘩すんな」


暁が宥める。


「ねえ暁。俺可愛くない?」


三國を無視して暁に聞けば、顔を見て下まで見てまた目線を戻す。


「ああ」


「やったね。蓮も可愛くない?」


「お前ってこういうの似合うんだな」



司さんが蓮の衣装のスカートをクイクイと引っ張る。


蓮は、バッとスカートを抑えて



「嬉しくないっす」



その光景に女の子たちは息を飲む。

萌え、ってやつだ。



「俺がメイクしてあげたんですよ、蓮。」


「へえ?センスあるな」


優介さんが褒めてくれる。


「藍人」


後ろから滝谷に呼ばれる。

滝谷はもう女装姿ではなく、ハッとする。



「もう交代でいいぞ。時間的に」



「ん、了解。サンキュ。つか、滝谷の女装の写真撮ってねえんだけど」



「あ?いらねえだろそんなもん」



「はあ?大事だろ。後で2人で撮ろー」



「何気色悪いこと言ってんだ馬鹿」



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