i -アイ-
名雲碧side
「碧さん、着てみました。どうです?」
脱衣所から出て、俺の居る書斎に来る藍人。
自分の姿を俯いて確認し、顔を上げ俺の様子を伺う藍人。
スーツを着て更に感じる。
この子は榛人の生まれ変わりなんじゃないかってね。
「よく似合っているよ。サイズはどう?」
「ぴったりです。なんなら、制服より丁度いいんですけど」
怪訝な顔で俺を見る藍人。
確かに制服のサイズは確認したが、ウエストや首周りは一緒に寝ていれば大体分かる。
藍人は本当に華奢だからな。
「そう睨むな。玄関に革靴があるから後で一度履いてみるといい。」
「ありがとうございます」
「香水とか、持ってきたかい?」
いつも必要最低限しか、荷物をこの家に持って来ない藍人。
「元々香水は持ってないですね」
おっと、これは想定外だったな。
藍人は情報通りであれば両親が居ない、施設育ち。
まあ、バイクを持っているから支援者は居るんだろうが、香水には金をかけてないのか。
「じゃあ、ここから選ぶといい」
衣装部屋の香水を置いてある棚に促す。
「こんなにいっぱい持ってらっしゃるんですね」
「TPOに合わせてね。お会いする人の好みに合わせる時もある」
「じゃあ、鬼龍さんの好みって分かります?」
……親父の好みか。