i -アイ-
あいつの変な落ち着きは、三國さんと暁さんの知り合いだから?
「佐伯」
声が聞こえて顔を上げる。
「大丈夫か?」
久遠藍人。
なんで、俺に話しかける。
俺にこんなに平然と話しかけるやつは、今までいなかった。
俺が少し前まで荒れていたことぐらい、話を聞いているはずだ。
「これ、良かったら」
差し出してきたのはミネラルウォーターのペットボトル。
「昼なんだけど、俺に聞きたいことでもあったのか?」
前の席の椅子を引っ張り、俺に向かい合うように座る。
「お前、怖くねえの?」
その言葉にキョトンとする久遠。
「佐伯の事が、ってことか?」
なんか、自分で言っててこれは。
「いいや、なんでもねえ」
「怖くないよ。」
真っ直ぐに俺を見て答える久遠。
「お前、変わってんな」
その瞳から目線を外す。
「あはは、よく言われる。もし、俺がお前に暴言吐かれても殴られても怖くないよ。」
ナメてんのか?
いや、こいつに限って……
いや、こいつに限ってってなんだ。
俺はこいつのこと何も知らねえのに。
「俺はさ、佐伯。お前が優しいやつだって、感じ取っちゃったんだよ。なんか昔からそういう能力みたいなの長けててさ」