i -アイ-
この子は、何のために俺に近づいたのか。
REIGNを守っていたのに、それを捨ててこちらに来たのか。
親父に会うのも、一切躊躇わずに、俺を守ると言う。
ただの世間知らずの子供なら分かる。
けれど、この子は i だ。
この間、宍戸李麻は i が現れたことによって始末された。
i は宍戸李麻が始末されることも分かっていて、宍戸李麻の元から離れたという。
俺の目の前にいる、この、子供がだ。
宍戸李麻は親父側の人間だ。
それを殺すことになったのは宍戸李麻が仕事を全うできなかったからだ。
けれど i に殺られてでは無く、自ら始末される道を選ぶよう i に誘導されたのだ。
「宍戸李麻とはどんな話をした」
コーヒーを入れる藍人に聞けば、ゆっくり俺を上目遣いで見上げ、ゆっくりまた手元に目線を下ろす。
「地獄で会おうなって」
その声はトーンが低く、落ち込んでいた。
「宍戸李麻に思い入れでもあるのか」
「いいえ、会うのはあの日が初めてでした。けど、死ぬには惜しい人だったから、会いたくなかった。俺に会ったら、きっとあの人は死を選ぶ。それを知っていたから」
この子は広く深く情報を掴んでる。
この歳で。