i -アイ-
「親父、こいつのおかげで今まで仕事が進まなかった。けれど、こいつがこちらにつくなら噛み合わなかった歯車が噛み合って動き出す。いいや、こいつがこちら側なら歯車が何倍も増えて加速する。」
親父は俺から藍人に目線をずらす。
「御庄榛人の生まれ変わりみたいだな、お前は」
藍人がニィッと笑う。
「よく言われます。鬼龍さんは御庄榛人が嫌いなんですよね?」
「さあな。もしそうだとして、よくここに来れたな」
「俺はこの顔がマイナスポイントになるとは思っていません。そうでしょう?鬼龍さん」
答えは言わず、親父に考えさせようとするなんてな。
普通しない。
「肝の座ったガキだな」
クックッと喉を鳴らして笑う親父。
「内心震えているかもしれませんよ?」
ふふふ、と笑う藍人。
「まあ精々社会科見学していけ。お前が死んでも誰も責任は負わねえ。自分のケツは自分で拭け。ガキだろうがなんだろうが家でのルールは守ってもらう。それが出来るなら文句は言わねえよ。」
……許可が出た。
俺ではなく、藍人が自ら受け答えをしたのが気に入ったようだ。
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
俺と藍人で頭を下げる。
藍人を一旦外に出し、俺と親父で少し話すことにした。