i -アイ-
Lv9
危険因子
碧さんに指示され、部屋を出る。
「ふう」
さすがに疲れたな。
縁側に座り、庭を眺める。
立派な家だ。
鬼龍灯志に見合った家だ。
同じ空間にいるだけで、もう少しで切れる糸の上を歩かされている気分になる。
切れたら終わり。
次はない。
切れる前に畳み掛けた。
しがみつくのではなく、あちらが思わずつなぎ止めたくなるような言い回しで。
まあそれでも、生きてきた時間が違う。
それはどうしたって誤魔化せないし、取り繕えない。
若くても、そばに置こうと思ってもらうためには面白いと思ってもらう必要がある。
普通の人間はそんなことで人材を選ばない。
けれど鬼龍灯志は、いらないと思えば殺せばいいから話は早い。
碧さんと鬼龍灯志の2人を相手にするのはかなり労力が必要だ。
だとしたら、あたしは碧さんに専念して、鬼龍灯志は任せるしかないな。
亮さんに。
「あら、お客さん?」
鈴のような細く凛とした声にあたしは振り向く。
そこに居たのは、透き通る肌にゆっくりと瞬きをする大きな丸い瞳、薄いけれど色気のある唇。
あたしは立ち上がり頭を下げる。
「久遠藍人と申します。初めまして、鬼龍音羽さん」
自分の胸に手を当てて、ニコッと笑いかける。
そんなあたしをものともせず、じっと見つめる鬼龍音羽(きりゅうおとは)さん。