i -アイ-
鬼龍灯志の長女、鬼龍音羽(きりゅうおとは)。
確か26歳。
独身だった気がする。
出入りしている人間は相当数のはずなのに、見たことがない人間だとすぐに気づくとは。
「初めまして。近頃耳にしているわ、貴方のお名前。……碧さんと共に行動を?」
ゆったり柔らかく話している音羽さんだけど、瞳は冷たい。
おっと、これは?
「知っていただけているなんて、光栄です。音羽さんのおっしゃる通りでございます」
微笑む。
とりあえず、波風立たぬように。
「貴方、高校生なのよね?」
「ええ、黎鳳学園高等部1年です。」
……足音がもうひとつ近づいてくる。
「久遠……その苗字の名家は一つしか私は知らないけれど、その血筋の方?」
久遠は古くから華道の名家であり、今は三國のお母さんの久遠のあさんが当主。
「華道の名家、久遠家のことでしょうか。残念ながらその血筋ではありません。黎鳳には秀才枠として入学いたしました」
「REIGNを捨ててやってきた野良猫の久遠藍人くん。」
ひょこっと顔を出したのは
「やはりいらっしゃいましたか、鬼龍臣さん。初めまして」
鬼龍灯志の長男、鬼龍臣(きりゅう じん)。音羽さんと二卵生の双子で、26歳。