i -アイ-
「失礼します」
頭を下げて隣を通る。
門を出てやっと、気が抜ける。
「ん?もしかして緊張してた?」
「当たり前でしょう?一歩間違えたら殺されるんですから」
拗ねるように言えば、はははっと笑いながら車に乗る碧さん。
碧さんが乗ってから、扉を閉めて反対側から乗り込む。
碧さんが運転手に行先を指示する。
指示した場所は丘にある公園。
着いてから碧さんは眺めの一番いい場所に歩き、胸ポケットから煙草を取り出し、吸い出した。
「煙草なんて珍しいですね」
確かに部屋には灰皿はあったし、吸うんだろうとは思っていたけど。
「ああ、藍人の前では吸わないようにしていたからね。」
「何故?」
「煙草を吸わない人間からしたら、匂いも煙も気持ちのいいものじゃないだろうからね」
気をつかっていてくれたのか。
「じゃあ、会う頻度増やします?そうすれば禁煙できたりします?」
真顔で碧さんを見れば、キョトンとして直ぐにくくくっと笑い出した。
「俺の健康まで心配してくれるの?」
「当たり前でしょう。俺は碧さんを守ると決めたんですよ?その覚悟をなめてもらっちゃ困りますね」
真顔でいいながらも、少しコミカルな口調で話せば、嬉しそうに笑う碧さん。