i -アイ-
「行きますよ、碧さん」
「君は、一つ教えてくれるとまた一つ秘密を置いていくんだな」
腕を解いて切なそうに笑う碧さん。
「飽きなくて、いいじゃないですか」
この世界に安心なんて言葉はない。
安心を追い求めても、踏み入れた場所がこの世界なら不毛なこと。
誕生会は老舗の旅館の広間で行う。
「親父、誕生日おめでとうございます」
男たちが整列して、バッと頭を下げる。
鬼龍灯志が一言話して、すぐ宴会状態。
とはいえ
「お前、碧さんの付き人なんだろ」
「ええ」
「下っ端は交代で見張りだ」
「お前酒飲めねえんだろ?」
そうか。
逆に好都合だな。
「はい、未成年なので。もし宜しければ時間長めに担当しましょうか?」
そう下っ端の人達に話せば、明らかに顔色が明るくなる。
「教えていただいていること自体ありがたいですし、喧嘩には自信ありますし、やらせてください。まあ、全部の時間となってしまうと、碧さんの顔を立てなくてはいけないので受けられませんが、少し会場に顔を出す程度で大丈夫だと思うので」
ニコッと笑えば
「お前って、案外良い奴か?」
さっきまで探るような目で話していたのに。
「良い奴ではないですよ?媚び売ってるだけかも」
なんちゃって、と笑う。