i -アイ-
あまりの雰囲気に誰も着いては来ないようだ。
人気のない場所まで歩いてきた。
止まってこちらを振り返る岸の表情は、思っていたものとは違かった。
落ち着いた、真顔。
「お前を責める資格が俺にはない」
驚いたな。
少しこの人を見くびっていたかもしれない。
「教えてくれ。あの時、李麻さんと何を話した」
どういう意味だったのか、ということか。
でもそれは、宍戸李麻が殺されると分かっていたからこそ話したことであって。
「ごめんなさい。それは、宍戸李麻と俺の秘密ということにして欲しい。あの人があの後殺されることを分かっていたからこそ、話したことだ」
真剣に岸の目を見る。
さっき、あんなに暴れてたのは演技か。
流石だな。
「言えることは、出来ることなら、あの人と会いたくなかった。あの人は俺と会ったら死を選ぶ。……あの人が死ぬのは惜しかった。才能のある人だから、出来ることなら救いたかった。もっと早く俺がこちら側に来ることが出来てたら、救えたかもしれない。申し訳ない」
頭を下げる。
「岸、あんたの言葉で分かった。あの時、宍戸李麻の判断が早かったのは、一人で責任を負うため、あんたを生かすためでもあったってことなんだろ?だから、責める資格がないって言ってるんだろ?……でもそれは、あの人の顔を最後まで立てたってこと。」