i -アイ-
そう一言だけ言って出ていった。
有栖川は一瞬だけ何かを考える顔をして、すぐに食事に集中した。
少しして久遠藍人は京馬と広間に入ってきて、
「皆さん、まだ早いですが俺はこれで失礼します。お邪魔しました」
微笑して軽く礼を知る。
所作が一般人じゃない。
藍人が部屋を出る時、岸が入ってきて
「帰るのか」
そう藍人に話しかける。
そのこと自体に俺たちは驚き、有栖川も岸を見た。
「はい。高校生なので」
岸の雰囲気が固くない。
「そうか。気をつけろよ」
まるで普通のガキ相手に話すようにそう言って、ポンッと頭に手を置いた。
藍人もそれを拒むことなく、
「ありがとうございます」
肩をくっと上げて普通の子供のように礼を言った。
俺は藍人が出ていってから岸に近づき、
「どういう心境の変化です?」
微笑んで聞けば、
「さあな」
無骨な返事をもらった。
「岸さん、あいつを容認するってことですか」
下っ端が恐る恐る聞いてくる。
「どんな風に丸め込まれたんですかね」
南が真顔で首を傾げる。
「丸め込まれたつもりはねえよ。」
はぁ、とため息をついて座る岸。
「京馬は仲がいいみたいだし?」