i -アイ-
「何を根拠に大丈夫じゃないかもって思ったの?」
『いや、今週お前見かけると気張ってる顔してたから、週末あたりになんかあんのかなって』
「はは、あなたの直感は凄いね?尊敬するよ」
第六感の持ち主だ。
『大事なもんだけな』
真っすぐ言えちゃうのも、才能。
「ありがとう、声聞けて嬉しいよ」
そう静かに言えば、押し黙る暁。
「今日は疲れたけど、大丈夫。声聞けたから復活。」
髪をタオルで乾かす。
「じゃ、また。寝るね」
『明日会えねえか』
……会いたくなったのね。
分かるよ。とっても。
「ん〜難しいかな。また電話する」
「藍人」
低く、熱い声。
『誰といる』
「今度話す。じゃ」
通話を切って、スルッと自然にポケットにスマホを滑らせる。
「すみません、髪乾かしたらここ出ますね」
悲しそうな顔をする碧さん。
碧さんは普通の人じゃないと、つくづく。
目が違う。
寝る前から震えて、うなされながら眠る人。
重度のストレスを重ねて、早死してしまうんじゃないかな。
今も、あたしを榛人と重ねて、他の誰かと連絡を取ることに傷付いているのかな。
時間が、止まっているのかな。