i -アイ-

名雲碧side





何を考えているのか知りたい、なんていつぶりに思っただろう。


俺の胸の中で眠るこの青年は、i で 久遠藍人 で、そしてもう一つの顔がある。


それを必死で隠し、平然を装う。

その隠した顔が見たい。

けれど、見たら離れていってしまう。彼の口から聞いたわけではないが、そういう事なんだろう。



俺は確かに、藍人に榛人を重ねている。

藍人を見ていると、落ち着く。けれど冷静になればなるほど抉られるような痛みが心と頭に感じる。



榛人は、俺が殺した。



その事実は消えない。



冷たく感情の乗らない声で、藍人が言った言葉。

でも彼もまだ高校生だ。


感じ取れてしまったんだ。


俺を守りたいという気持ちが本物で、俺が榛人と藍人を重ねていることへの悲しみが。


年甲斐なく藍人を欲しいと思う俺と、欲しいものを欲しいと言わず他を優先する藍人。


ああ、俺にはもう、この子が疑いの的じゃなくなってる。

信頼、してる。


笑える。


信頼?この世界にそんなもんはない。


あるとするなら、確実な利益を持って手を組む。そのぐらいだ。



「眠れない?」


俺に抱き締められて眠る藍人のくぐもった声。


「悪い、苦しかったか?」



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