i -アイ-
頭も体も熱くなっていく。
あの日の記憶が走馬灯のように流れる。
汗がじわりじわりと流れていく。
「御庄榛人があなたを恨んでいなかったら?」
俺はいつの間にか、藍人の胸倉を掴んでいた。
「それ以上はやめろ。いくらお前でも踏み込んでいい話じゃない。」
やめろ、そんな目で見るな。
真っ直ぐな、子供のような目。
「あんなやつ、忘れてよ」
そんな澄んだ目からボロボロと涙が流れていく。
「記憶から消してあげられたらいいのに」
泣きじゃくる藍人。
「こんなに、碧さんは苦しんで生きてるのに」
胸倉を掴んでいた手が震える。
「御庄榛人は、とんだ馬鹿野郎だ」
そう言って無理やり笑う藍人。
俺は胸倉から手を離す。
「……藍人、君に指示をしている人間も自分勝手な馬鹿って言っていたね」
藍人は自分の涙を拭いながら、こくんと頷いた。
「ええ。……心から愛しています。」
本当の笑顔。
ああ、この子は手に入らないんだ。
そう理解した。
「君は、榛人に会ったことがあるんだね」
目線を下ろして、少し考えた藍人。
「はい。でも、なぜそう思ったんです?」
「榛人を馬鹿呼ばわりする人間はなかなかいないよ」