i -アイ-
俺にはよく分からないが、
「わるーい大人がいるらしくてさ。お前らも行く?」
ニコッと笑う榛人。
ここまでの会話が、前フリだったのかもしれないと思った。
テスト前でラーメンを断るであろう俺に話しかけ、それをメンバーに話して。
違和感を作り出す。
本当に分かりづらい。
けど、長い付き合いのREIGNのメンバーは分かるらしい。
「テスト前だから早めに頼むぞ」
「おーう」
その言葉通り50〜60人ほどの相手を5人で潰して、ヤクザ予備軍のような奴らの頭に話しかける榛人。
俺はNo.2の座にいる。
けれど、喧嘩が強いだけ。
何度かこんな場面に立ち会って感じたのは、榛人の背中が見惚れるぐらいかっこいいと言うこと。
俺は、やっぱり榛人に惚れてる。
自由で、でかい空を飛び回っているように見えて、色んなものを抱えてる。
俺はその抱えてるものを軽くしてやりたかった。
「まーた難しい顔してんのな」
ビッと俺の眉間に指を当てる榛人。
「うるさい、ここ図書館」
「はは、悪ぃ悪ぃ」
休みの日に図書館に来てみれば、榛人が私服で本を読んでいた。
……絵になる。
このギャップも女子からしたら堪らないんだろう。