i -アイ-
でも、俺を見つけてニッと笑った榛人を見れば分かる。
ああ、うるさい人に見つかった、と。
つまり、男に対する榛人はそんなかっこいいものじゃない。
俺はなんでこんなやつを、と思うことも多々ある。
榛人が読んでいる本は、経営、投資等、御庄グループの跡取りらしい物ばかり。
それも、洋書も混じっていて。
隣に座る榛人が俺の耳に手を当てて、
「何見てんの、エッチ」
俺は思い切り榛人の腕にシャーペンを突き刺す。
でかい声を出せないから、声を殺して悶える榛人。
頬杖を着いて頬を隠す。
声、近い。
そんな事で赤面してる俺の事なんか……
ああ、腹が立つ。
こいつはきっと分かってる。
人の心に聡いこいつが、分からないでこんなことをしているのなら、本当に馬鹿だ。
「耳真っ赤」
チョンッと俺の耳を触る榛人。
ガタンっと音を立てて俺は立ち上がり、勉強用具を仕舞う。
「怒んなよ碧」
からかってる。
こいつは。
帰ろうとすると俺に着いてくる。
「着いてくんな」
ガキみたいなことしか言えない。
「俺も集中力切れた。」
俺は別に集中力が切れたわけじゃない。