i -アイ-
「な、ラーメン食い行こう」
この間からずっとそれだ。
「適当に女でも連れて行けばいいだろ」
「えー、女って気分じゃない」
胸のあたりがキリキリする。
自分で言っといて、傷つくとか。
「俺は行きたくない」
拗ねて、どうする。
「なあ、碧ってさ」
「ごめん、本当に、俺帰るから」
傷つきたくない、嫌われたくない。
ぐちゃぐちゃだ。
「やだ」
……いつもこいつは。
俺は榛人の胸ぐらを掴んでキスをした。
どうしようもなかった。
傷つく。
嫌われる。
ああ、最悪だ。
「碧、にいちゃ」
その声が聞こえて、ハッとする。
その声の先には、臣が居た。
「じゃあな」
榛人に背を向けて臣の元へ歩く。
「臣、どうした。1人か」
「おつかい」
そう言って指さす方には、家の人間が何人か。
「碧さん、お疲れ様です」
頭を下げられる。
「ご苦労様です」
慣れないものだ。
頭が冷えていく。
傷つく、嫌われる、か。
この事が分かれば、自ずと同じ結果だ。
榛人は、このことも知っているのかな。
「臣様、俺たちからあまり離れないでください」
こいつらは、さっきの死角で見えてなかったのか。
「うん」
臣は、見てしまった。