i -アイ-
「碧〜、いつ一緒にラーメン食い行ってくれんの?」
御庄榛人は馬鹿だ。
記憶喪失なのか?
それとも、なかったことにしたいのか。
「榛人って、名雲くんのこと本当に好きだね」
ビクッと反応する俺。
「え?」
榛人が首を傾げる。
「名雲くんに冷たくされても毎回声掛けるし」
「そうそう、REIGNにまで入れちゃうし」
つまり、なんでこんなやつを、ってことだろ。
「名雲くん可哀想だよ」
こんなやつ構うなよ。ってことか。
俺ってこんなにネガティブだったかな。
「なーに言ってんの」
小馬鹿にするように女の子たちを見て言う榛人。
「碧、めっちゃ喜んでるじゃん。皆分かってないなぁ」
俺は、悪い男にハマったらしい。
「ま、皆はまだ分かんなくていいよ。皆が分かったら俺なんかよりもっとモテるよ、碧は」
頬杖をついて俺を見る榛人。
「え、え〜そうなんだ」
理解できない様子の女達。
「碧は不器用で無口なだけで、かっこいいんだから!」
なんて、おネエ口調でくねくねする榛人。
何考えてんだか。
榛人の周りには自然と人が寄ってくる。
榛人といると面白い。飽きない。
それが自然なのか意図的なものなのかは分からない。悟らせない。