i -アイ-
藍side
『藍人、仕事だ』
碧さんから連絡が来た。
渋木蒼大(しぶきそうた)。
鬼龍組に数年前破門にされた男。
当時は有栖川天の部下で、薬の件で問題が上がった時に仕事を任せられ、自らも薬に手を出してしまったことから破門となった。
有栖川天は薬には詳しいが、それを鬼龍組に蔓延させないように動いている人間。
今回は、鬼龍組が経営している風俗の女性たちに声をかけ、薬漬けにして何店舗か経営破綻に追い込もうとしているグループのトップが渋木蒼大と分かったらしく、始末することとなった。
破門生ということで、こちらの顔は割れているから、あたしに声がかかった。
そして、
「女装して潜入してくれるか」
といった依頼。
「だから、俺なんですね」
「悪いな。釣れると思って」
渋木蒼大は大の女好きらしい。
「女で優秀な人間は残念ながら鬼龍には居なくてね。お願いできるか」
「ええもちろん。」
女だけどね。
「今回のことが成功すれば、アリスからの風当たりも良くなるだろうし」
黒のタイトスカートに黒のキャミソールに黒のレースのブラウス。
地毛とほぼ同じ色のロングのウィッグ。
黒のミュール。