i -アイ-
「あたしはここに貰いに来たの。奉仕しに来たんじゃない」
「俺に付き合ってくれたら、タダでやるよ」
耳元で囁く渋木。
あたしは軽く渋木を睨む。
「ナメてんの?だったら、後払いってことにしてよ。先に手元にないと信じらんないから」
ニイッと笑って、
「ケン」
後ろの男に声をかけ、持ってこさせた袋。
中には、コカイン。
これをタダでくれるなんて、相当儲かってんだな。
「おら」
あたしに渡す渋木。
「ふふ」
あたしが笑えば、渋木が腕の力を強める。
「有栖川が喜ぶね」
顔を見上げ笑えば、目の色を変える渋木。
ドンッとあたしの肩を押す。
「てめえ」
「稼いでるねえ、渋木」
「何もんだ」
「勝てると思ってるの?噛み付く相手間違ってるんじゃない?」
手渡された袋の写真を撮り、碧さんに送る。
『始末して』
すぐに返信が来る。
「渋木蒼大、ここで終わりだよ」
袋をスキンヘッドに投げる。
「……あ?ナメてんのはお前だ」
鼻で笑う渋木。
「女一人で来て、何が終わるんだ?はっ、てめえの人生か?」
渋木の言葉に周りの連中が笑い出す。
「女一人、ねえ」
あたしはこの偏見をどこで覆すことができるんだろう。
「まあいいか」