i -アイ-
渋木の方へ近づけば、後ろに近づく気配を感じてその人間の鳩尾に肘鉄を食らわせて、下がる頭を掴み流れるように膝を入れる。
覚束なくなる脚の膝裏を蹴り、膝まづかせ、再度頭を蹴りあげる。
そのあともあたしに迫ってくる人間を再起不能にさせる。
かなり血を浴びたけど、服が黒だから目立たないな。
前髪をかきあげ、渋木の方を見る。
「誰の命令だ」
「誰だと思う?」
「女でこんなにやれるやつは俺がいた頃には居なかった」
「自ら破門になるようなことをしたのに、何故鬼龍に噛み付くの?バレたら殺されても仕方ないこと。分かっていたはずでしょ?」
いらない会話をするつもりは無い。
「うるさい、誰の命令だって聞いてる」
ああ、この人はただ一言、こう言って欲しかったのか。
「有栖川天……」
目が微かに見開かれる。
やっぱり。
「だったら、良かったね」
気が抜けるように俯く渋木。
そして、あたしに黒いものを突きつける。
マカロフ。
「消えろ」
パンッ
銃声とともに、あたしは血を浴びる。
渋木が銃を手放したのを見て、渋木の急所を何ヶ所か狙い倒れさせ、肩の上に膝を立てる。