i -アイ-
「わあ、速」
感嘆の声を上げ、銃をジャケットに仕舞うのは臣さん。
臣さんは、渋木の銃を持つ方の手を撃った。
その血をあたしが浴び、一瞬の隙を見て倒した。
「臣さん、来るなら来るって言ってもらえますか」
臣さんは気配を消すのが上手いから一瞬焦った。
臣さんだと気付いてから動いた。
仲間内で殺し合いが始まったとなれば、あたしは不利だ。
丸腰のあたしにとって。
「ええ〜、言ったら面白くないでしょ。藍人の喧嘩も見てみたかったし?」
「はぁ。臣さん、この人どうします?」
「んー、藍人はどうするつもりでいたの?碧さんに指示されたんでしょ?」
始末しろ、ってね。
ヤクザさんたちなら殺してしまうんだろうけど。
碧さんがあたしにお願いしたってことからしてそういう事じゃなさそう。
「お前……名雲碧の犬か」
どこか残念そう。
「渋木、アンタは有栖川天さんが好きなんだね」
「あ?」
「部下じゃなくて犬って。アンタは飼い主にかまって欲しくてヤンチャして捨てられた犬なんだろ?」
「お前、何言ってんだ」
「有栖川天に殺されるなら本望だとでも思ってるんだろ?」
図星、か。
眉間に皺を寄せて黙り込む渋木。