i -アイ-
亮さんの言葉で更によく分からなくなってくる。
「名雲碧が若頭になった理由知ってるか」
聖さんが肉を切りながら呟く。
「御庄榛人を守るため、なんだ」
頭が、オーバーヒートしそうだ。
「ま、榛人が死んでから若頭になっちまったんだがな」
まるで、名雲碧が御庄榛人を殺したんじゃないみたいな言い方。
「榛人は何でも出来た。全てを手に入れた。でもそれを妬むやつは沢山いる。榛人は正攻法でしか立場上自分の家族を守れない。……名雲碧は、そんな榛人の代わりに正攻法じゃないやり方で榛人を守ってきた」
「No.2の鑑だな」
はは、と笑う親父。
「つまり、御庄榛人さんが誰かに狙われていたのを、名雲碧さんが守っていた、と」
三國さんも動揺している。
「まあ、そういう事になる。碧はヤクザを嫌ってたし、別の道に進むことだってできた。あいつは元々孤児で養子だから。けど、自分に出来る唯一の方法を生み出して、榛人を守ろうと思ったんだろ」
「じゃあ何故、今名雲碧さんは榊を狙ってるんです」
優介さんが問えば、大人全員がこちらを見る。
「榊を狙ってるのは碧じゃねえ」
元さんが低く唸る。
「他でもねえ、鬼龍灯志だ」
息の仕方を忘れそうになる。
「碧はお前らに少し危害を加えて、鬼龍灯志を宥めて時間稼ぎをしてる。その証拠に、お前ら1人も死んでねえだろ。」