i -アイ-
着替え終わると、高瀬さんが、大きな鏡の前の椅子をあたしに向けて、
「次は髪ね。どうぞ座ってください?お姫様」
高瀬さんの言葉が一つ一つ優しくて、
「なーんか、女の子扱いされるの久々でむず痒いですね」
「ふふ、そっかぁ。藍ちゃん、可愛いのに勿体ないなぁ」
「ありがとうございます。顔が榛人に似てるから褒められても綺麗ってしか言われたことなくて」
「その褒め方をする男はまだまだだね」
クスクスと不敵に笑う高瀬さんは、私の前髪をピンで止めて、メイクをしてくれる。
服の色もあるから、オレンジ系のナチュラルなメイクにしてくれた。
リップはツヤ感のある鮮やかなテラコッタ。
アイラインは長めのタレ目がち。
髪は、違和感のない高そうなウィッグで、ナチュラルブラウン。
長さは、切る前と同じぐらいの胸あたりまでのロング。
軽く内巻きに。
「わあー、男装も楽しいけど、やっぱこっちの方がテンション上がる」
「どう?藍ちゃんってバレると良くないと思って、カワイイ系に仕上げてみたけど」
ピアスは揺れるタイプの物にして、香水も甘めな物をワンプッシュだけ。
「三國、大丈夫かな」
苦笑いする高瀬さんに、あたしが首を傾げれば
「三國も一応男だからね」
その返答に、ああ、と少し理解する。
「女には困ってないでしょうし、大丈夫ですよ」
「そういう問題でもないと思うけどね」