i -アイ-
「司さん、腕折れた?」
「多分ね」
「まだまだですね」
「うるさいよ」
良かった、生きてて。
「まあ、もうちょっと暁も三國も疲れてくれると思ったんだけどな」
「なめんじゃねーよ」
拗ねたように言う三國。
「で、お前はここで何がしたいわけ」
司さんがあたしに聞く。
「答えを求めるな、そう言いたいところですけど、まあ今回は気になりますよね」
でも、ここでの演出の全ての監督は碧さんだ。
碧さんを見れば、少し考えて
「藍人の喧嘩が見てみたいな」
面白いことを言う。
「いいですけど、あっちにハンデありますよ?」
「ハンデなんかねえよ、ウォーミングアップだろ」
三國が手を広げる。
「……くそだりぃな」
「あ?聞こえてんぞ」
「やだな〜三國とやるの。でもまあ、碧さんのご希望だからね」
「そうじゃなくても俺ら、喧嘩中、だしな?」
ニヤッと笑う三國。
それは、あたしが謝らなきゃいけない喧嘩のことかな。
あたしが前に出れば、三國が歩いてくる。
少しずつスピードをつけて、ブンッと拳を顔面目掛けて振り下ろす。
風を感じるくらいギリギリでよけて、その腕を引き背負い投げる。
ドダンっと地面に体を打ち付ける三國。