i -アイ-
「碧さんの守りたかった人に守ってくれとお願いされた人間は、誰?」
『でもそれを叶える前に、碧が殺される。俺たちはまだ、その壁を乗り越えられるだけの力を持っていない』
「守りたかった人が死んで、この数年、守り続けた人は、誰?」
『俺を殺してくれと、頼んだ』
「碧さん」
もはや、叫び声だった。
笑わなきゃ。
「あなたが守ってくれたのは、あたしだ」
ぼやける視界の中で碧さんが目を見開いたのが分かった。
「もういいんだ、いいんだよ。守らなくていい。あたしは、強くなったから。
今度は、あたしが貴方を守る。
榛人に、碧を頼むって言われたから」
碧さんは、短い呼吸を続ける。
「碧さん、俺は久遠藍人でも、i でもない。
あたしは、御庄藍。御庄榛人の娘です」
碧さんがあたしの腕を引く。
そして、抱きしめられる。
碧さんの体が震えてる。
「何も、怖くないよ。誰も、死なないよ。もう、失わせないから。もう、震えながら眠らなくていい」
声を殺して、泣く碧さん。
「榛人も、まりあも、あたしも、あなたを恨んでなんかいない。
苦しかったでしょう……?
榛人の馬鹿が、本当にごめんなさい」