i -アイ-




碧さんはあたしの肩に顔を埋めて、声を殺す。


泣き顔も見せないように。


どれだけ、この人は我慢してきたんだろう。



「邪魔するぞ」


その声にまた、安堵する。


「遅かったか?」


あたしは顔だけそちらに向ける。


「グッドタイミングだよ、亮さん」


碧さんがピタリと動きを止める。

そして、顔を見せないように涙を拭いて亮さんの方を見る。



「あはは、鼻赤いからバレてるよ」


「うるさいよ」


「藍、終わったぞ。」


「ありがとう、亮さん。」



鬼龍灯志が捕まった。

数々の罪が、証拠と一緒に警察に届けられ、そして、



「全員、碧につくそうだ」


幹部全員に見放された。


「藍〜、こいつらも警察連れてくー?」


呑気にそんなことを言うのが息子だというから驚きだよな。


「ダメだよ、あたし打っちゃったし」



「あは、そーじゃん。ちゃんと急所外してるのを見れば、なかなかの手練だね」



「秘密にしておいて」



「本当にお前は面白いね」



そうクスクス笑いながら、一人一人倉庫から運び出していく臣さん。



「話は後だ。亮、藍を病院に」


ふう、と息を吐いてソファに項垂れる碧さん。


「ああ。暁連れてこい」


ああ、番犬が来てしまう。

その前に、



「碧さん」




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