i -アイ-
「ん?」
優しく返事をしてくれる。
「ごめんなさい」
「どうして謝る。謝るのは、俺の方だよ」
「碧さんは、榛人を守りたかったはずでしょ?」
碧さんはあたしの頭をポンポンと撫でる。
「そんな所まで、親父に似てるんだな」
「え?」
「馬鹿だな。榛人の体の一部みたいなもんだろう、家族は」
どこまで、いい人なんだ。
「まあ、家族、居たことないんだけどね」
ふふ、と自嘲気味に笑う。
「じゃあ、碧さんはあたしの2人目のお父さんだね」
目を瞬かせる碧さん。
「榛人の馬鹿の代わりに、あたしを守ってくれる人だから。これからは、碧さんの家族はあたしだよ」
ニコッと笑えば、目を赤くする碧さん。
「君は、とことん、俺の欲しい言葉をくれるね」
「榛人の馬鹿に似てるからね」
「そんなに馬鹿馬鹿言ってたら、地獄で怒鳴り始めるよ?榛人」
「あはは、地獄ね。」
これから、傷だらけの心を一緒に癒していきたい。
だから、消えないで。
あなたは、今にも消えそうだ。
「藍、そろそろ」
番犬が吠えた。
「碧さん、また」
「ああ」
「消えないでね」
「藍こそ」