i -アイ-
佐伯蓮side
暁さんが藍人、いや、藍を連れていく。
その後ろ姿を、真剣に見つめる名雲碧。
亮さんが、名雲碧の方へ近寄る。
「顔色、悪いな」
亮さんが呟く。
「でもまあ、前よりコケてねえってことは藍に飯でも作ってもらってたのか」
名雲碧は何も言わない。
「これから、どうする」
亮さんのその言葉に、名雲碧は立ち上がる。
「岸、南、有栖川、そんでそこに居る幹城と鬼龍臣はお前について行くんだとよ」
「……お前は昔からお節介だね」
亮さんと身長を比べれば、名雲碧も身長が高いことが分かる。
「そんなこと言ったら、お前のだーいすきな榛人の方がドのつくお節介だろ。」
名雲碧は、はぁ、と息をつく。
「表舞台の人間は黙っててよ。」
普通なら、好意的な意味には捉えられないけど、亮さんが笑っているということは、いい意味なんだろう。
「辞めるなら、今だぞ。藍に、簡単に会えなくなる」
「愚問だな。お前らが表を俺が裏を。それが一番、昔からベストポジションでしょ」
藍と話していた時よりも、無愛想な声。
幹城に声をかけ、出口へ向かう。
「死ぬなよ。藍が悲しむ」
名雲碧は手をヒラヒラと力なく振りながら倉庫を出ていった。