i -アイ-
御庄藍side
「おい、何があった」
あたしの顔の横に手を置き、あたしをじっと見つめるのは、
「滝谷、久しぶり」
「おう久しぶり。ってそうじゃねえだろ!」
「心配かけたな」
皆にも声をかけられたけど、滝谷以外は風邪で納得してくれた。
……けど、滝谷は納得してくれない。
人通りの少ない廊下の壁に壁ドンされて、早10分ほど。
でもまあ、滝谷に嘘をつくのは申し訳ない気もする。
「分かったよ。分かったから。今度ちゃんと話す」
「今度っていつだよ」
「今度。近いうちだから、許せ」
「今度絶対だからな」
両手でドンッと壁ドンする滝谷。
「絶対。約束する。滝谷には世話んなってるし」
「世話?」
自覚がないあたりが滝谷らしいな。
あなたの平和っぷりには、いつも助けられてるよ。
「藍」
呼ばれてそちらに目線を移す。
滝谷も同じように目線を移す。
「ああ、暁」
滝谷は手を降ろして、ポンッとあたしの肩を叩く。
「んじゃ俺、先教室戻ってる」
「おー。」
若干ビビりながらも暁にペコっと頭を下げて帰る滝谷。