i -アイ-
「あいつ、何」
機嫌を損ねたらしい。
「はは、友達。なんで休んだんだ本当の理由を教えろ!って詰められてた」
ゆっくりあたしに近づいてきた暁は、ムニッとあたしの頬をつねる。
「女だってバレてねえんだよな?」
「ん」
コクンと頷けば、
「本当か?」
もう片方の頬もつねられ、遊ばれる。
「本当だってば」
暁の両腕を掴む。
赤くなるでしょうが。
「手続きは済んだのか」
「うん。漸さんの方で終わらせてくれたみたい。でもまあ、戻るのは数日後かな。」
「そうか」
今日で、久遠藍人は黎鳳を辞める。
目的は果たしたし、居るべきじゃない。
特にお別れの言葉なんかも、言わないで今日は帰るつもりだ。
「かなり学校中のお前のファンやら友達やらが心配してたぞ」
「そっか。居なくなったらショック受けるかな」
「受けるだろうな」
「モテ期終了か〜」
「……モテたいのか」
ピキっと音が出そうなくらい短気筋が浮かび上がる暁。
「ははは、違うよ。久遠藍人としてってこと。……i の活動も必要なくなるしね」
窓の外を眺める。
残念ながら曇り空。
そろそろ雪、降るのかな。