i -アイ-
榛人が死んだのも、こんな時期だった。
『 藍へ
この手紙を藍が読んでいるということは、
俺は死んだんだろうな。
まりあも藍も、どうせあのバカ、
ぐらいに思ってるんだろうな。
そう、俺、バカなんだ。
まりあと藍のことになると
救いようないぐらいバカになるんだ。
藍はきっと、俺が死んだ理由を
知りたがると思う。
俺に似てるから。
知りたいと望むなら、俺も教えたい。
どれだけ危険が及ぶとしても、
お前が強くなったら、この手紙を
渡して欲しいと祥に頼んだ。
つまり、お前がこれを読んでるってことは
強くなったんだな。
さすが俺の娘!
俺を殺した疑いがかかるのは、
亮や碧なんだろうけど、亮のことは
お前も知ってるから違うと勘づくと思う。
けど、碧には会ったことがないから
碧を1番に疑うと思う。
でもな、碧は、俺の一番の親友なんだ。
無口で無愛想で何考えてるか一見
分からないと思うけど、
人一倍優しいやつ。
その碧に俺は頼み事をした。
俺を助けたいと思うのなら、
まりあと藍を優先してくれ、と。
碧にとっては、
辛い頼みだったかもしれない。
でも俺が死んで、まりあと藍が
生きているのなら、碧が俺との約束を
果たしてくれたってことだ。
碧が、まりあと藍を守ってくれた。
そして、俺が死んだ今も、
2人を守ろうと必死で
自分の手を尽くす、
そんな健気なやつなんだ。