i -アイ-
碧さんが手紙を読み終わって数分、耐えるように何かを考えている。
学校を辞めた日から、数日この先の手続きのため、どこに通うこともなく準備してる。
その中で碧さんとのスケジュールを組んで、碧さんの家に来た。
部屋着とか置いてたし、それも取りに。
あたしは手紙を読み終えた碧さんには干渉せずに、荷物を片付ける。
一応今日も藍人の格好で来てる。
世間体で言うと、関わっちゃいけない世界の人だからね。
しかもその世界のトップ。
「藍」
呼ばれて手を止める。
「ん?」
碧さんの方を見れば、無表情だけど、ガラス玉のような瞳じゃなくて、優しい瞳であたしを見ている。
「もう、ここには来るな」
あたしはその言葉に頷く。
「分かってます。御庄藍はここにはさすがに来れない」
悪い顔でニィッと笑って見せれば、呆れた顔をする。
「久遠藍人でも、だよ」
「ん〜それは約束できませんかね」
「もう、御庄藍としてだけ、生きてよ」
碧さんが心配してくれているのも、他の人たちが心配してくれているのも分かっているつもりだ。
でも
「諦めて、碧さん。あたしが誰の娘だと思ってるの?」
碧さんは、盛大に溜息をつく。