i -アイ-
「俺は十分守ってもらった。今度は藍が付けていて欲しい。きっと、榛人が君を守ってくれる」
その言葉の意味をじんわりと感じ取る。
あたしはこれから御庄藍として生きていく。
それが本来の人生だけれど、御庄藍として生きるということは逃げも隠れも出来ない、本来の姿で勝負していかなければならないということ。
「これから辛いことが沢山あると思う。まあ、藍には利人や漸さんが居るけど、両親がいないという点では、俺と似ている境遇でもあるだろう。周りに頼ることも大切だけど、1人で頑張らなきゃいけない場面で、そのお守りはだいぶ力になる。俺はもうオジサンだし、そのお守りがなくても大丈夫なくらいには地位も権力もあるからね。」
ふふ、と笑う碧さんは、とことん上品な人だ。
「ありがとう。大切にする。」
真剣に碧さんを見つめる。
「けど」
碧さんがキョトンとする。
「碧さんはあたしのもう1人のお父さんだから、ここには来るからね。何がなんでも。分かった?」
こてんと頭を横にして、ムスッとすれば、驚いたように目を瞬かせ、またクスリと笑う。
「分かった分かった。いつの間にか大きい娘が出来ちゃったな」
「大きい余計なんだけど」
碧さんがあたしを抱き締める。