i -アイ-
あたしは両手を上げて降参だと表現する。
「ごめん、そんなふうに感じた?……うーん、本当の理由はね」
あたしは逆に蓮の胸ぐらを掴んで、引き寄せ、耳元で
「三國が困ってるかなぁと思ってさ」
そう言って、胸ぐらから手を離し、困ったように笑って見せた。
あたしの行動に、息を飲む蓮だけど、すぐに手の力を抜いて息をはいた。
「だったら、最初からそう言え」
「はは、ごめん。でも、照れ臭いじゃん」
呆れたように隣に座り込む蓮。
あたしも隣に座って、
「ごめんて。蓮を利用したようなもんだし、何でもするから許してよ」
蓮の顔を覗き込むように言う。
蓮も、頭が回るねえ。
話が早くて助かる。
三國に特定の女がいるってなったら、この学校大変なことになるでしょ。
そんな時に、蓮が珍しいことしたら、そっちに興味が向くかなぁって。
「いい」
「え?」
「……いいっつってんだよ」
何故かスッキリしたような顔をする蓮。
「三國さんのためになんなら、いい」
その言葉に、じわっと心が温かくなった。
本当に、弟みたいなものなんだね、三國。
「ふふ、そっか」
嬉しくて素で笑ってしまった。