i -アイ-




「え、蓮はREIGNの人に聞いた方がいいんじゃない?」


すぐには、頷かない藍人。


「ほら、先輩たちばっかりだし、会長さんもいるんだし」


意外だった。


藍人は蓮を気に入ってる感じだったから、すぐに頷くと思った。

藍人は藍人なりに、REIGNと距離は置いときたいのか?


「あ、それに」


佐伯蓮の返事より前に、思いついたように呟く藍人。



「碓氷さんが教えてくれるんじゃない?」



その言葉に佐伯蓮がピクッと動く。

俺らからしたら、別に変な事じゃない。


碓氷司先輩は、2年の学年トップで模試でもトップクラスにいる人だ。


少し間が空く二人の会話に戸惑っているのは、俺だけじゃない。


何か、佐伯蓮の様子を真っ直ぐに見つめる藍人が、一般人だとは思えなかった。


「いや、別に蓮がいいならいいよ。……蓮は、どうしたい?」


何かがあるんだ。

俺らには分からない、何かが。


佐伯蓮は、俯いて何かを考えているようだった。


「……やめとく」


そう呟いた佐伯蓮に、柔らかく笑う藍人。


「うん。」


藍人は、通り過ぎる時に蓮の頭をポンポンと撫でた。


聞かない方が身のため。

そんな気がした。


けれどこいつは、悪いやつじゃない。



「なあ、藍人」




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