i -アイ-
ガラガラバサッ
階段の踊り場から、物音がした。
俺と藍人で見ると、白衣を着た人が画材のようなものをぶちまけていた。
「大丈夫ですか?」
藍人は急いで階段をおり、拾い始めた。
「ああ、ごめんね。やっちゃった」
俺も手伝いに行き、拾う。
確か、美術の槙野って教師。
「美術室まで手伝いますよ」
そう笑った藍人の言葉に顔を上げた槙野。
「本当?ありが……」
そこまで言って、固まった。
少しずつ目を見開く。
手に持った画材をまたぶちまける。
その様子に、俺らも固まる。
「……はる、と」
槙野は、藍人を見てそう呼んだ。
何言ってんだ?この人。
「……えっと、俺は藍人、ですけど」
藍人も困惑している。
「あっ、ごめん。俺の友達に似ていて、驚いちゃって。」
槙野はそう言って画材を拾う。
「美術室って、どこでしたっけ?あ、滝谷、先に図書館行ってて。」
「……おう」
いつも通りの藍人。
けれど、少し違って見えたのは俺だけなのか。