i -アイ-
藍side
『……は、ると』
そう呼ばれた時、心臓がドクンッと音を立てた。
その白衣を来た、優しそうな先生があたしを見てそう呼んだ。
榛人を、知ってるんだ、この人は。
榛人の友達だと言った、その人に出会えた嬉しさと、その人が本当に友達だったのかという疑念。
「ごめんね、手伝ってもらっちゃって」
「あぁ、いいですよ。この量をさすがに1人ではキツくないですか?」
「あはは、持てると思ったんだけどね」
少し天然っぽいその先生。
「よし、じゃあそこに置いておいて大丈夫だよ。ありがとう」
美術室に着いて、画材を置く。
「君、見たことないから、きっと1年生だよね?」
美術は2年次に選択する教科。
「はい。久遠藍人って言います。」
「……くおん、あいと……」
そう言って、少し目を瞬かせて、ふわっと笑ったその先生。
「初めまして、俺は槙野祥(まきのしょう)。美術教師。」
あたしと同じぐらいの身長。
でも、大人で少し不思議な雰囲気の先生。
「俺ね、榛人の友達だったんだ。久遠はまりあの旧姓だね?ふふ、藍人だなんて、榛人や利人くんの真似をしたのかな?」
その言葉に、今度はあたしが固まる番だった。