i -アイ-
三國は、目先の欲望に従順なやつだと俺はずっと勘違いをしていた。
本当は遠くの利益を手繰り寄せて、確実に手に入れる策士だ。
けれどその巧妙さは、周りに見せずに、警戒される前に気持ち悪いほど綺麗に奪い去っていく。
本当に敵側にいなくて良かったよ。
橘は、御庄と友好関係にある。
その御庄の長男である、御庄榛人という男が、まさに三國のようだったらしい。
いいや、三國の完成版というところか。
三國はまだ、未熟なのだ。
こんなに俺達よりも頭がキレても、久遠藍人の考えが読めないのだから。
それか、久遠藍人が格上なのか。
演技だと話したそれ以前の振る舞い。
俺は演技だと思えなかった。危険で、不利益そのものだった。
暁はその演技を見透かしていた。
幼馴染みだから、分かる、というより、直感が人より優れている。
だからこそ、REIGNのトップに君臨している。
暁はカリスマ性の塊。生まれた時から、違う。
そんなふうに感じさせる人間。
「……これからもっと俺らは危険になる。」
三國の一言に全員が顔を上げる。
「藍人は一見疫病神なんじゃねえかってほどにな?とはいえ、俺も分からねえことが多すぎる。藍人は俺より頭がキレるから」
平然と信じられないようなことを話す三國。