i -アイ-
「あいつの言う通り、これまでより気を引き締めて行動してくれ。まあ、俺もだけど」
俺はその言葉の意味を直後に知ることになる。
家までの帰路、いつの間にか俺は気を失っていた。
一瞬のうちに、3人ほどに捕まえられ、注射器で何かを打たれ、意識を手放した。
目が覚めると、
「お、起きたー?桜庭くぅん」
風貌からしてヤクザ。
そして、薬の匂いが強い。
ごく稀に俺らの相手にも薬をやってる奴がいるから、匂いは知っている。
俺は拘束はされていないらしい。
けれど、体がだるい。
そして少し痺れている。
立つこともこの状態じゃ無理そうだ。
睡眠薬以外に何か打たれたな。
「さっすがぁ。冷静だね?」
主に話しているのは、銀髪の長髪をハーフアップにし、グレーのカラコンをした男。
耳も口もピアスだらけ。
目の焦点はブレ続け、瞬きの回数が異常。
その後ろにはスーツを着ていても分かるほど、ガタイのいい男がズラリと並んでいる。
「この間ぁ、佐伯くんだっけ?その子潰して迎え入れようとしたら、i にかっさらわれちゃってさぁ。しかも、うちの幹部君も蒸発しちゃったのよぉ。困るよねぇ人員不足♡なのに」
その言葉に少し違和感を覚えた。
それだけ後ろに人間がいて、何が人員不足なのだろう。
「ここはぁ、i の縄張りじゃないから安心して?邪魔されないからさぁ」
ニタァッと笑ったその男の顔によって、俺の危機感が増幅する。
壊れた人形のようだ。