愛の深さに溺れる
だって彼は、
「久しぶりだね、安田さん」
___俺が海老塚さんから引き離した煩わしい男。
「また、ここに居るんですか」
「また?それは今日も、だよ」
「アンタみたいな人に捕まった海老塚さんが可哀想です」
「何言ってるの、逆だよ」
そう、逆だよ。俺に捕まったからこそ彼女は幸せなんだよ。
自信ありげに話す俺を見た安田さんは明らかに引いた顔をした。
「俺は貴方が怖いですよ」
「そう」
「彼女は…海老塚さんは本当の貴方を知らない」
「そうだね」
「もし何事もなく海老塚さんを幸せにすることが出来るなら、海老塚さんは何も知らない方がいいです」
「うん、俺もそう思うよ」
もちろん今までの事を彼女に知られることなんて絶対にしないし、させないけど。
「それより安田さん早く仕事に戻れば?」
「……」
「もう時間でしょ」
早くこの場を去れと言わんばかりの言葉の圧と笑みを浮かべ、彼は一瞬ゴクリと唾を飲んだ。